設備投資の資金調達に目処がついたら、すぐに考えることは生産性向上設備投資促進税制!

今回は、今までに無いタイプの税制なので、とてもご質問が多い、生産性向上設備投資促進税制について詳しく説明をしたいと思います。従来の税制は、設備投資を行った後で、確定申告書にその設備投資をしたことを記載すれば適用ができたのですが、生産性向上設備投資促進税制は設備を取得する前に経済産業局などに申請がいる点が大きく異なります。
手続きが事前に必要になったため、手間はかかりますが、会社規模に関係なく適用できること、建物や内装設備にも適用できることなど、画期的な税制になっています。ポイントは、その節税額とそれに伴う事務負担とをしっかり検討することです。

  • 対象となる設備投資

A類型とB類型の二つのパターンがあり、それぞれで適用のための要件、手続が異なります。
■A類型:先端設備を導入する場合
■B類型:利益改善のための設備(生産性やオペレーションの改善に資する設備)を導入する場合

  • 税制上の優遇措置

税制上の優遇措置の内容は、A類型、B類型ともに次の通りです。
平成26年1月20日~平成28年3月末まで 即時償却または税額控除(5%)
※ただし、建物・構築物についての税額控除は3%
平成28年4月1日~平成29年3月末まで 特別償却(50%)または税額控除(4%)
※ただし、建物・構築物についての特別償却は25%、税額控除は2%

  • 必要な手続

A類型:「工業会等が発行する証明書」を設備メーカーから取得し、税務申告の際に確定申告書へ添付する
B類型:「税理士等の事前確認」を受けた投資計画について、「経済産業局による確認」を受け、当該確認書を税務申告の際に確定申告書へ添付する

A類型については、先端設備に該当するか否かについて、メーカーに問い合わせ、該当するのであれば証明書を依頼することで当該税制の適用を受けることができますので、ここからは、手続きが複雑だが、知っていると効果の高いB類型について説明いたします。

B類型(利益改善のための設備(生産性やオペレーションの改善に資する設備)を導入する場合)には、税理士等の事前確認を受けた投資計画について経済産業省の確認を受けることが要件となっています。
*詳細は経済産業省のHPなどをご参照ください。

 

(1) 対象設備

機械装置、工具、器具備品、建物、建物付属設備、構築物、ソフトウェアが対象になります。
ただし、中古資産や海外で使用する設備などは対象から除外されます。
また、対象設備には「取得価額要件」というものがあり、機械装置については、1台又は1基の取得価額が160万円以上のもののみが対象になるなど、設備項目によって金額基準が設けられています。

(2) 対象者

対象業種に制限はなく、青色申告をしている法人及び個人事業主が広く対象となります。

(3) B類型適用までの流れ

  1. 申請者は「投資計画」を作成し、税理士等に事前確認を依頼します。申請者の規模に関係なく、税理士等の事前確認が必要とされています。
  2. 税理士等が投資計画の内容を確認し、申請者に「事前確認書」を発行します。ここで税理士等は、税務申告時にサインをしてもらっている税理士(いわゆる顧問税理士)である必要はありません。
  3. 申請者は、投資計画及び、税理士等による事前確認書を添付した申請書を作成し、経済産業局へ申請します。
  4. 申請者は、経済産業局による「確認書」を受領します。
  5. 設備の取得等をします(経済産業局による確認は、設備の取得等の前の実施が必要です)。
  6. 申請者は、税務申告の際に、確定申告書に4の確認書を添付し、所轄税務署に提出します。
  7. 設備の取得等をする年度の翌年度以降3年間、実施状況報告が必要です。

(4) 投資利益率

B類型の適用要件として、申請の対象となる設備投資によって一定の経済効果が見込まれることについて、経済産業局の確認を受ける必要があります。設備投資についての一定の経済効果は、具体的には以下の算式で計算された年平均の投資利益率が15%以上(中小企業者については5%以上)であることとされています。

投資利益率(%)=(営業利益+減価償却費)の増加額(※)/設備投資額
(※)分子の「(営業利益+減価償却費)の増加額」は、設備取得年度の翌期以降3年間の平均値
つまり、中小企業の場合、設備投資を行ったことによる営業利益(減価償却費を計上する前)に与える効果が投資額の5%以上であれば、要件を満たすことになります。

 

  • B類型の税理士等による事前確認についてのQ&A

Q1 どんなときにB類型を使えばいいですか?
A類型は、あくまで一つの設備が先端設備に該当するか否かで、税制の適用可否が決まるのに対して、B類型は、一連の投資計画全体を単位として、投資利益率が要件を満たすかどうかを判断するものです。ですので、必ずしも最先端の設備でなくても、一定以上の生産性を向上させるものであればよいことになります。つまり、生産ラインの新設や入れ替え、小売業・サービス業などの新規出店、リニューアルなどにも適用できる可能性があります。

Q2 具体的な節税効果
(例)平成27年3月期期首に500万円の機械(耐用年数5年:定額法)と、150万円の構築物(耐用年数15年:定額法)を取得し、要件を満たした場合
【特別償却の場合】
通常は、減価償却費が、機械:500万円÷5年=100万円、構築物:150万円÷15年=10万円計上できることとなりますが、要件を満たした場合、即時償却が可能となりますので、機械:500万円、構築物150万円全額が償却費として計上できることとなります。
法人税等の実効税率を35%とすると、((500万円+150万円)ー(100万円+15万円))×35%=187万円
つまり、適用初年度は187万円の税額削減効果があることになります。

ただし、即時償却をしたものは、翌期以降は償却費は計上されませんが、即時償却をしなかった場合には、毎期、減価償却費を計上できるため、長い目でみると費用になる金額は変わらないことになります。
よって、特別償却を採用する場合は、当期の税金を特に減らしたいという場合に適しています。また、今後、法人税率が下がる見込みであることを考えると、特別償却を採用する方が、メリットがあるかもしれないのでシミュレーションをしてみると良いと思われます。

【税額控除の場合】
機械:500万円×5%=25万円、構築物:150万円×3%=45,000円の合計29万5千円の税額控除ができます。
税額控除は、即時償却(特別償却)とは異なり、翌期の税金には影響しないため、純粋に税額の削減となる。ただし、法人税額の20%が上限となるため、そもそも支払う法人税額が少ない場合には効果が低い時があります。

Q3 ものづくり補助金などと併用できますか?
はい、対象になります。ただし、法人税法上の「圧縮記帳」の適用を受けた場合は、圧縮記帳後 の金額が税務上の取得価額となります。

Q4 税理士等による確認業務の成果物はどのようなものですか?
B類型の適用を申請するにあたって求められている税理士等による事前確認についてご依頼いただいた場合、成果物として「事前確認書」を作成・提出します。
「事前確認書」には当事務所の税理士が記名・捺印します。

Q5 依頼してから事前確認書発行までの期間はどれくらいですか?
ご依頼時のお客様の準備状況によりますが、確認に必要な書類が整備されている場合、ご依頼から2週間ほどで事前確認書を提出いたします。お急ぎの場合には、その旨ご相談ください。B類型の場合には、設備の取得等の前に経済産業局による最終的な確認まで行っていることが必要になります。
経済産業局による確認書の発行には、1ヶ月前後かかるとお考えいただいたほうがいいですので、税理士等による事前確認は、余裕をもってご依頼されることをお勧めします。

Q6 具体例はありますか?
当事務所における相談例としては、次のようなものがございます。
・空調設備製造ラインの導入(受注増に対応するため)
・小売業の新規出店時の設備投資(店舗内装含む)

Q7 顧問税理士はいるのですが、確認業務だけを依頼することはできますか?
はい、できます。事前確認書に署名した税理士と、確定申告書に署名する税理士が異なっても問題ありません。

Q8 事前確認業務の料金はどのくらいかかりますか?
事前確認書の作成業務のみの場合・・・8万円(消費税別)〜
事前確認書の作成業務を含めた申請全般についてサポートする場合・・・20万円(消費税別)〜
事前確認の料金は、手続の範囲、件数等に基づいて異なりますので、詳細は個別にお見積りいたします。

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